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第十二話
今年は源平ものが多かった
約四百年の歌舞伎と三百年の落語――この長い歴史をたどると、両者の間に、えもいわれぬ因縁があるのが分かる。持ちつ持たれつ、付かず離れず、互いに寄り添いながらこんにちの隆盛を築いてきた。
落語ネタを歌舞伎に取り入れた、という例は明治中期の三遊亭円朝(1900年没)のころだから比較的近年のことだが、落語の方は、ちゃっかりしたもの。名場面、名セリフ、名優たちを拝借して茶化したり、パロディー化にして楽しんだ。
約四百年の歌舞伎と三百年の落語――この長い歴史をたどると、両者の間に、えもいわれぬ因縁があるのが分かる。持ちつ持たれつ、付かず離れず、互いに寄り添いながらこんにちの隆盛を築いてきた。
落語ネタを歌舞伎に取り入れた、という例は明治中期の三遊亭円朝(1900年没)のころだから比較的近年のことだが、落語の方は、ちゃっかりしたもの。名場面、名セリフ、名優たちを拝借して茶化したり、パロディー化にして楽しんだ。
それでも、歌舞伎からいろいろ頂戴した、といってもやみくもに取り上げていたわけではない。自ずと、落語にしやすい話と、ちょっと遠慮している演目があったりする。
歌舞伎の世界で、不入りになると上演されるので「独参湯(起死回生の妙薬)」といわれる「仮名手本忠臣蔵」は、落語の世界にも人気が高い。十一段すべてにゆかりの落語が存在する、というのはよく知られた話である。
例えば、風呂場をすっかり芝居小屋風にして喜ぶ「芝居風呂」(二段目)、判官切腹の演技を扱った「淀五郎」(四段目)、現行の斧定九郎役を作り上げた役者「中村仲蔵」(五段目)、お軽が登場する「七段目」、「男でござる!」の「天河屋義平」(十段目)などである。
では次は、というと、やはり歌舞伎でも人気の「源平もの」ということになる。
「義経千本桜」「ひらかな盛衰記」「娘景清八島日記」などといった歌舞伎の名狂言から、十代目桂文治が得意にした地噺「源平盛衰記」、名人、八代目文楽の十八番「景清」、六代目三遊亭円生の「猫の忠信」などの名演が生まれた。
これで、歌舞伎の三大名作の二つまでが登場したわけで、次は当然「菅原伝授手習鑑」ということになるのだが、違う。
よく知られている噺は「菅原息子」という噺くらいだ。芝居好きの息子が、外から帰るなり、「菅原伝授―」の「寺子屋」の場面の真似ばかりする。揚げ句、説教した父親を投げ倒して「女房喜べ。せがれが親父に勝ったわやい」と見得を切る始末。
「菅原伝授―」でも、「よだれくり」の登場など唯一こっけいなシーンが展開される「寺子屋」ならではのパロディーである。
「伽羅先代萩」も同様だが、何か落語風に笑ってしまってはならないような厳粛な雰囲気がこの狂言にはあるのだろうか。
ちなみに、今年(2006年)、歌舞伎座で上演された演目を振り返ると、「源平もの」が五本、「菅原」と「先代萩」が三本ずつ。「忠臣蔵」が意外と少なく一本だけだった。
もっとも、国立劇場では、十、十一、十二月の三ヵ月をかけて真山青果の「元禄忠臣蔵」を通しで上演する。06年の忠臣蔵はこれにお任せ、である。
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