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第二十四話
芝居で、落語で人気の「七段目」
歌舞伎の世界を題材にした落語、芝居噺の中で、最も頻繁に高座に掛けられるのが「七段目」である。滑稽味、オチともに見事なまでに、パロディー精神を貫いた傑作落語だ。
芝居の「七段目」は、ご存知と通り、「仮名手本忠臣蔵―祇園一力茶屋の場」である。
敵(かたき)の目をくらますため、由良之助は、京・一力茶屋で遊興三昧の生活を送っている。そこへ、力弥が一通の手紙を届ける。それを隣室のお軽と縁の下の斧九太夫が盗み読む。それを知ったお軽の兄・平右衛門。物語の展開にとっても、役者のしどころにとっても重要な人物が大勢登場する場である。
由良之助の真意を悟った奴の平右衛門が、「妹、そちが命は兄がもらった」と、お軽に切りかかるところを、落語がそっくり頂戴した。
―ある大店の若旦那の芝居好きは半端じゃない。店をほったらかしての小屋通いに、大旦那は怒り心頭。芝居見物から帰ってきた若旦那に説教をするのだが、せりふや役者の声色を使って、大旦那を煙に巻く。番頭が中に入って、若旦那を二階に追いやるのだが、そこでも芝居の真似が始まった。見かねた大旦那が、小僧の定吉に命じて、静かにするように伝言させるのだが、小僧がまた無類の芝居好きとあって、二人で「七段目」を始めてしまう。飾ってあった本物の刀を振り回し、夢中でやっているうちに、定吉が足を滑らせて階段から落ちてくる。
「てっぺんから落ちたか?」
「いや、七段目」
ほぼ全編が、芝居のせりふで占められているので、歌舞伎に精通した噺家がやらないと、雰囲気が出せない。
原本は古く、安永五(一七七六)年版の噺集『鳥の町』に載っている。初代の林屋正蔵が「芝居好き」という噺に直した、といわれている。
とにかく、商店の小僧までもが歌舞伎に精通しているのが驚きである。
江戸の二大娯楽、歌舞伎と落語に「七段目」は、見事に活かされたわけである。
「七段目」を題材にした落語に、もうひとつ「おちゃるか」がある。まとまった一席ではなく、小話程度のもの。ほとんどやる人がいなくなった。
―料亭の二階で雷が大暴れ、階下では地震がどんちゃん騒ぎ。お互いに「うるさい奴だ」と、意識し合っている。やがて、目が合うと、「そこにいるのは落ちゃる(お軽)じゃないか」
「そういうお前は揺ら(由良)しゃんか」
雷は落ちる、地震は揺らす、現象を描いている。
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