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猿若町の人々 第八回 |
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金井大道具株式会社
金井勇一郎(かないゆういちろう) |
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1960年8月東京生まれ、東京理科大学理工学部建築学科卒。06年に父から金井大道具株式会社を継いで社長に。2001年に日本演劇大賞、04年に読売演劇大賞優秀スタッフ賞を「夢の仲蔵千本桜」と平成中村座「加賀見山再岩藤」で、06年に同最優秀スタッフ賞を『NINAGAWA 十二夜』の美術で受賞。 |
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定式幕が開くと舞台一面の鏡に観客席が映し出され、誰もが感嘆の声を上げた『NINAGAWA 十二夜』。あの印象的な舞台を作ったのが金井勇一郎氏である。
大学に入るまで、金井大道具の社長であった父親の仕事について、よくわかっていなかった、と聞いてまず驚く。大学では建築を学んだが、特に目的があったわけではなかった。卒業後にN.Y.メトロポリタンオペラハウスで学んだ2年間がターニングポイントとなる。
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「あの2年がなかったら、違っていたと思う。外から日本を見られたことが良かった」
帰国後、猿之助さんに出会い、スーパー歌舞伎「オグリ」の時から舞台美術を任されている。
「猿之助さんは要求が厳しいし、妥協もしない。でも我々のために厳しい。厳しくかわいがってもらっている」
厳しい要求に反発することはないのだろうか
「自分の場合はあまりない。演出家の要求以上のものを見せればいい。たとえば、演出家と美術家が白がいいとか黒がいいとかもめる。でも、良いか悪いかはお客さんが決めることで、こだわるのはもっと違うところ。脚本と同じですよ、どこに山場を持っていくかということ」
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その言葉どおり、『NINAGAWA十二夜』の舞台美術はのっけから周りを驚かせた。
「蜷川さんからはミラーと使うことと、歌舞伎の様式を壊さないという要望があった。後は好きにやらせてもらった。あの時、歌舞伎座の仕事は初めて、と言うと蜷川さんも驚いていた。逆に歌舞伎座を知らなかったから出来たんだと思う」 金井さんはこれまでも、スーパー歌舞伎をはじめ、平成中村座や、コクーン歌舞伎、海外公演など、制約にとらわれない歌舞伎舞台を作ってきた。
「平成中村座は、一枚の錦絵だけ参考にして作った。昔の芝居小屋を調べたわけじゃない。要するに復元が目的じゃなくて、雰囲気が出れば。技術性より娯楽性を求めた移動テーマパークみたいなもの。劇場は、役者とお客さんと建物が三位一体にならないと。どんなに機構が良くても、使わないと意味がないし」
でも歌舞伎には定式がありますよね。
「何をもって定式というか。たとえば歌舞伎座は横長だけど、パリに行ったら縦長。そうしたらアレンジしなきゃならない。合わせて変化していくことが大事かな。歌舞伎専用劇場と言うけれど、劇場は専用である必要が無い。歌舞伎をやれば歌舞伎。逆に中村座で普通の演劇が出来る。よくどんな劇場が良い劇場かと聞かれるけど、一番良いのは、そこに働いている人がどれだけ劇場に対して愛情を持っているかということだと言ってます。裏方だけじゃなくて、受付とか照明とか、支配人とか、働いている人の気持ちがどれだけ反映できているか。それが私の定義です」 |
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『NINAGAWA十二夜』の舞台模型。この模型を使って、舞台のイメージや照明などを演出家と確認する。模型そのものも美しい。 |
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序幕1場 大篠左大臣広庭の場 |
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2幕2場 織笛姫邸中庭の場 |
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3幕5場 織笛姫邸広庭の場 |
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十二夜の舞台は構想から2ヶ月で作り上げた。短期間で完成させるタイトな仕事だが、ご本人は最初の打ち合わせから本番まで常に楽しいのだそうだ。
「趣味は仕事。とか言ったら怒られるかな。留学から帰って、猿之助さんに目をかけられたり、幸運は幸運。だけど幸運だけでは仕事できない。その分恩返ししないと。トップとしてがむしゃらに働いて、姿勢を示さないとスタッフもついてこない。どんな仕事も来るもの拒まず。だから大変」
仕事以上のギャンブルは無い、と笑う金井さん。これから三谷幸喜さんの新作や、サマーズの舞台、新橋演舞場の『憑神』など次々と仕事が待っている。歌舞伎だけにこだわらず、まだ組んだ事がない人と新しい舞台づくりをしていきたい。伝統と革新。父が守ってきた古典と息子が進む道。二つはバランスをとりながら、ともに明日の劇場を作っていく。 |
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〈戻る〉
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